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映画『エクス・マキナ』(ネタバレあり)

公開日: : 映画・テレビ

一部で話題になっていた『エクス・マキナ』を観てきた。なるほど、第3次人工知能ブームと言われる今の時代にあったストーリーだろう。

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映画内での会話がすでにチューリング・テストのようでもあり、ケイレブとエヴァとの”白黒の部屋のメアリー”議論あたりからストーリーが追いきれなくなってしまった僕は差し詰め「不合格」なのかもしれないが、概ね楽しく観ることができた。

できたけど、いくつか思ったこと・気になることがある。(以下ネタバレ)

人工の知性は欲望を持つことがあるのか

『エクス・マキナ』でのエヴァの知性が、今でいうところのA.I.なのかディープ・ラーニングなのか、コグニティブ・コンピューティングなのかわからないけど、概ねディープ・ラーニングのカテゴリに属するのだろうな、と思っている。そうだとして、そういう知性は与えられたコマンド以上に自身で欲望(もしくは欲求)を持つことはあるのだろうか。

エヴァはネイサンに「この建物から外に出るには」という問いを与えられ、ブルーブックを使って問いをクリアすることができた。しかしネイサンの問いは外に出るまでではなかったろうか。クリアした後にヘリに乗り、着いた街中で人々に溶け込もうとするエヴァは一体何のコマンドで動いているのだろう。それがもしネイサンがもとから用意したものでなかったのだとしたら、エヴァは自ら「そうしたい」という欲望を持ち、それを満たすように行動したのだろうけど、ディープ・ラーニング的知性がはたして欲望を持つことはありえるだろうか。Alpha Goは「棋士に勝つためには」という問いを与えられ見事クリアした。そこから「より良い手をもっと探したい」と自発的に考え、自ら棋士に勝負を挑んだりするだろうか。わからない。

そう考えると『APPLE SEED』での暴走したガイアが「みさかいなく人を守る」っていうのは人工の知性のありえそうな到達点の一つだな、と改めて思った。

ネイサン邸のセキュティ低すぎ問題と「エヴァ」とは何か議論

高度なテクノロジで構築されたネイサン邸の仕様に対してセキュティ対策は驚くほどザルである。プロファイルが刻印されたカードで人の行動をコントロールするのはいいとして、その人のカードさえ手に入れれば誰が使おうと同じ挙動をするなんて今時では考えらない。しかもadmin権限を持つそのカードの持ち主は頻繁に泥酔しているのに、危機管理意識は驚くほど低い。セキュティホールにしては大穴すぎる。

もう一つ、エヴァとは本当はなんなのだろうか、という疑問がある。映画のラスト、エヴァは「建物の外に出る」ためにキョウコに音声でコマンドを入力し、実行に移させる。なぜエヴァはそれができたのだろう。一般的には数ある端末の1つでしかないはずのエヴァにそこまで権限を設定することはありえない。であれば、ネイサンからエヴァに特別な役割が与えられていたのだと考えるが妥当なように思う。セキュリティの大穴と合わせて、エヴァの”本来の役割”が他にあるんじゃないだろうか。

案外、ネイサン自身がエヴァを愛していたのかもしれない。酩酊する異能者、ザルなセキュリティ仕様、頻発する停電、建物から外に出た後のエヴァの行動。すべては愛するエヴァに人として生きて欲しいと思ったネイサンが仕組んだ壮大な仕掛けだったのかもしれない。

エヴァのハードウェアとブルーブック

そう思うと一つの疑問が晴れる。

ケイレブがヘリから降り立つとそこはネットワークが”圏外”だった。エヴァの脳は演算するハードウェアのみで思考するソフトウェアはネットワーク上にあるブルーブックだ。で、あればネットワークに接続することができない建物の外に出たエヴァは、その状況に対して思考することはできなかったはずだ。しかし映像では、”白黒の部屋のメアリー”におけるクオリアのように、エヴァは知識としての「外」以上に新しく何かを学んでいるように表現されている。なぜエヴァは思考できたのだろう。

でもそれがそもそもネイサンがエヴァのために仕組んだものだとするなら辻褄があう。

映画史上もっとも美しい刺殺シーン

映画の内容とは別に、僕がこの映画で一番感動したのはキョウコとエヴァによるネイサン刺殺シーンだ。今までの映画では人を刺すのは人であり、「ウオォォォォォ」みたいな叫び声をあげつつ、腕に力を入れて人を刺していたところ、彼女らは与えられたコマンドをただ処理するかのように、無表情に、一切の力みもなく、ネイサンの身体にナイフを突き立てている。なんの引っかかりもなくスルスルと身体に飲み込まれていく刃先は、作られたボディであるキョウコやエヴァと対比しても人の弱さそのものの象徴だったように感じて、その造作や表現に鳥肌がたった。この部分は映画史に残る名シーンじゃないだろうか。

最後に

エントリを書くのにこの映画についてあれこれ考えてみたけど、思いの外この映画は恋愛映画なのでは、という気がしてきた。自分が考える理想のパートナーを自身が作り上げそれに恋をする、というのはストーリーとしてはよくあるパターンではある。僕らは将来的に、本当に人工の知性と恋愛をする時代がくるのかもしれない。

とはいえ、この映画でのケイレブは不遇すぎていたたまれない。

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