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映画『母よ、』

「好きな映画監督は」と聞かれたらナンニ・モレッティと答えている。20歳くらいの時に観た『赤いシュート』の印象がとても強く、このblogのサイト名も氏の作品である『親愛なる日記』からもらっている。

難点なのはほとんどの人が作品を観たことがなくて共感を得づらいのと、作品そのものの説明もしづらいところ。第54回カンヌでパルム・ドールを受賞した『息子の部屋』はまだ少し理解してもらいやすいが、初期のミケーレ三部作とか、3年前にロードショーされた『ローマ法王の休日』など、観た人が困惑する作品が多い。

それに、イタリア映画祭2007で一瞬だけ上映されたあとロードショーもDVDスルーもなく「もう見ることもできないのかー」とか思っていた『Il caimano』が、『夫婦の危機』に改題された上で2015年の「Viva イタリア vol.2」で上映されたなんて話、mixiのナンニ・モレッティコミュのオーナーであるこの僕が、このエントリ書くために情報調べていて初めて知ったくらい国内での情報が少ない。

そんなモレッティの最新作『母よ、』がロードショーということで早速観に行ってきた。

本作も、とてもナンニ・モレッティらしい作品だった。タイトルが『母よ、』(原題は『私の母』)だし、公式サイトでのストーリー紹介もそういう書き方をしているから、母を中心にした家族愛の話だと思って観に行くとかなり困惑すると思う。「何が言いたいのかわからない」と感じる人も多いんじゃ無いだろうか。

氏の作品の通底には常に「人生は映画である」というのがあると思っている。

人はだれでも「自分の人生」という映画では、自分自身が監督でもあり脚本家でもあり役者でもある。しかし映画の制作はそれだけでは行えない。カメラマンや照明、エキストラなど多くの人が作品にかかわっている。人生も同じだ。だからどんなに自分が望むようなストーリーが作れたとしても、思い描いたような作品に仕上がるとは限らない。マルゲリータが言うように監督(つまり自分)は傲慢なクソ野郎だと感じるときもあるし、バリーが言うように映画の仕事(つまり自分の人生)なんて最低だと思うときもある。本作でのモレッティのように時に脇役を演じることもあるし、キューブリックでのバリーのように登場機会すらないかもしれない。

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もしかすると何の意味もなかったのかもしれないと不安になるときもある。マルゲリータの母のようにただ消えて無くなってしまうものなのかもしれないと心配するときもある。それでもいずれ、必ず、作品は完結する。ハッピーエンドなのか、バッドエンドなのかはその時になってみないとわからないが、作品が完結した後に、観た人、携わった人が、ポツリポツリとその作品について語り合えるなら十分幸せなんではないだろうか。モレッティはそう語りかけているように思う。

毎度登場するやたら捲したてる疲れるキャラがいるのはご愛嬌。今回は皮肉の効いた笑いが抑えられてはいたが、やはり一番好きな映画監督であることは揺るがない。

それはそうと、そろそろ氏の過去作品をまとめたDVD-BOXとか発売になったりはしないのだろうか。昔の作品を改めて見直したい。

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