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映画『サウルの息子』

公開日: : 最終更新日:2016/04/03 映画・テレビ

先日、2016アカデミー賞 外国語映画賞を受賞した『サウルの息子』を観た。全編にわたって緊張を強いられる映画だった。

『サウルの息子』は、収容されたユダヤ人同胞の死体処理の仕事を負わされているゾンダーコマンドに配属された主人公サウルの視点から、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所で起きていたこと、そしてナチへの反乱に至るまでが描かれている。しかしサウルが反乱で活躍する話では無い。協力こそすれ、彼はただひたすらに「息子」を「正しく埋葬する」ことのみに奔走し、映画もそれに沿って進んでいく。

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この映画の最大の特徴は撮影技術というか画面構成にある。

まず予告編にあるようにスクリーンの左右は黒ベタで固定される。映像として動いてる部分は4:3のような画像サイズ。これによって視点はほぼ正面に固定されるように感じる。僕は頭を固定されて映画を見させられたような感覚を覚えた。

もう一つは被写界深度の浅さ。同胞を騙してガス室に送り、遺体を回収して焼き、その灰を川に捨てる作業をさせられ、あげく自分自身も口封じのためにいずれ殺される運命にあるゾンダーコマンドであるサウルが、視界の中でも最低限なものしかフォーカスを合わせずその苛酷な状況を極力直視しないようにしている様が絶妙に表現されている。

そして観客である僕らは、逆に劇中で何が起きているのか理解するために、フォーカスのあっているわずかな部分はもちろん、フォーカスのあってない多くの部分も、必死に見、考えることを強いられる。反乱についてはセリフでの説明もあるが、ゾンダーコマンドとしての苛酷な日々の労働や、ハンガリーから移送されてきた人たちに何が起きているのかは、劇中まったく説明がないのだから。

僕自身、ナチのホロコーストに関しては詳しいわけでも、特別に調べたりもしていない。ゾンダーコマンドの存在もこの映画まで知らなかった。ただ最近NHKスペシャルで放送した「新・映像の世紀」での強制収容所の実態は観ていて、『サウルの息子』でそれがどう表現されるのかに関心があった。

映画では、主人公をヒロイックに描くのでもなく、状況の悲惨さを強調するのでもなく、その不条理な大きな流れの中に置かれた一人の男が、自分が犯した「罪」を神に赦しを得ようとする姿だけが描かれていた。僕らが極限の状態に置かれたときに取れる行動ってきっとこれくらいしかできないだろう。そういう弱い一人の人間の行動のみを追うことで、ユダヤ人が置かれた苛酷な状況を冷静にあぶり出すことに成功していると思う。

正直、これを自宅のテレビでは最後まで観ることはできなかったろう。そういう意味で劇場で観れて本当によかった。重い内容ではあるが、この作品を作った製作陣には敬意を表したい。

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