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読了『無形民俗文化財が被災するということ』

公開日: : 書籍・雑誌

これも図書館で見かけ気になっていたので借りて読んでみた。

祭りにはその中心となる神社や神輿・山車などの有形物はもちろん大切だが、それを彩る演奏や舞・踊りなども重要になってくる。そしてなによりそこに参加する人たちがあってこそ祭りは存在する。しかし2011年3月の東日本大震災での津波はそれらの多くを押し流していってしまった。

本著は津波被害が大きかった宮城県太平洋沿岸の各地でフィールドワークを行い、被災後の状況について調査したものをまとめていて、基本的にそれぞれの地域の「震災前の状況」「地域での祭りのあり方」、そして「震災被害の規模・状況」、最後に「被災後の祭りの状況」という構成になっている。

震災後の復興を伝える報道で「地域の祭りが復活した」というニュースを見聞きすることも多く、それが復興のシンボルとして扱われることもあるが、その祭りがもともとその地域でどういう意味があったのか、そして被災後にその祭りがどのように変異したのか、詳細に知ることは少ない。もちろん被災したすべての祭りをカバーしているわけではないが、本著ではいくつかの地域での状況の詳細を教えてくれる。

被災範囲が広かったこともあり、紹介されている祭りの種類もさまざまだが、同時に被災状況やもともとの祭りのあり方のさまざまなため、被災後の状況はほんとに多様だ。

信仰心が厚い、というか、祭りが生活に根付いている地域は中心となる神社の再建に熱心で、自宅がまだ被災したままの状況の中でも時期や場所を変えながら祭りを復活させようと取り組んでいる。「お祭りをやらないわけにはいかない」と地域の人たちは語る。そして復活した祭りに集まる人たちの表情も一様に明るい。

対して、地域振興として一度廃絶した祭りを復活させていた地域で震災によりふたたび途絶えようとしている、といった事例や、復活させたくてもそれを担える人がいない、という状況も紹介される。バブル景気の時期に神輿を大きく派手にしたが、その後の少子高齢化で担ぎ手の確保が難しくなり、震災がそれに拍車をかけることになってしまった神社や、復活させた祭りで使う面が今まで使っていたものと違いすぎて心中複雑な人たち、20年周期という祭りの時期に震災が重なってしまったために復活の方法について模索する地域など、各地で抱えている問題はどれも複雑だ。またアニメ・コミックス『かんなぎ』の聖地・七ヶ浜でのファンたちによる活動と地域の人たちとの交流も紹介されていてとても興味深い。

地勢的な問題、東北地方にある”契約講”という古くからの地域コミュニティの今後、明治維新から高度成長期を経て大きく変わる地域経済(規模や内容まで)、それに影響をうけ、そのあり方、内容、時期も大きく変化してきた祭り。今までどう伝えられてきていて、そしてこれからどう残していくのか、それとも残さないのか。震災はその問題を提示する。そしてその多様な問題を知ることで、改めて東日本大震災が広範囲に、そして深刻な被害を及ぼしたのだということを理解する。

本著のベースとなった、宮城県からの受託事業として東北アジア研究センターが実施した「東日本大震災に伴う被災した民俗文化財調査」の情報は、みやしんぶんデータベースとしてまとめられている。

みやしんぶんデータベース

ちょっと厚めの本なので読む時間が取れないようであれば、ぜひページにアクセスして、各地域にどんな文化・祭礼があり、震災でどのような影響をうけ、祭りがどのように変わっていったのか知って欲しい。

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