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『かぐや姫の物語』を見てきたわけだけど

公開日: : 最終更新日:2014/09/13 映画・テレビ

スタジオジブリ、高畑勲監督の『かぐや姫の物語』を見てきた。

kaguyahime
(C) 2013 畑事務所・GNDHDDTK

予告編はこんな感じ。

で、見てきたのはいいんだけど、一体どう解釈すればいいのかよくわからずblogにエントリするのをしばらく躊躇っていた。

ちなみにほぼネタバレなんで、未見でこれから見ようと思ってる人は読まない方がいいかと。

話しの筋としては完全に「竹取物語」だ。もちろん原作との差異はあるし、この作品に新たに加えられた解釈や、除かれたシーンはあるけど、竹から産まれた女の子が翁と媼に育てられ、美しく育ち、様々な高貴の方々からの求婚をぜんぶ断った上で月に帰る、その基本的なラインは何ら変わらない。映画ならではの「おお!」という独自の展開もあるわけでもなく、ただひたすらに「竹取物語」で始まり、終わっていく。

竹取物語 – Wikisource

とはいえ、映画作品に限らず、あらゆる創作物には制作者のメッセージが込められているはずだ。作った人が、それを見る人に何を伝えたいのか、見た事でどう考えて欲しいのか、そういう思いがどこかにあるはずで、作品を見る以上、それをちゃんと受け取りたいと思っている。で、今回の「かぐや姫の物語」で制作者が伝えたかったことはなんだったのだろうか、と考えてるんだけど、どうにもわからない。だって昔から慣れ親しんでた「竹取物語」で、それ以上でもそれ以下でもないように思えたからだ。

もちろん映像表現は素晴らしい。相模殿が持ってきた蒔絵をかぐや姫がサッと広げるような、流れるようなビジュアルがスクリーンを満たす。かぐや姫の成長すらカットを割らず表現されるアニメーション。柔らかく繊細で水彩画のような塗り、力強くそれでいて可憐な線、アニメーションならではでアニメらしくないフレームワーク。満開の桜の下で両手を広げ回るかぐや姫のシーンは鳥肌が立つ。もうそれだけでこの作品の魅力を語るには充分な気もする。

でもどうしてもすっきりしない。作品の裏に何かあるような気がしてならない。

そんな中で、この本を紹介してもらった。

ユリイカ 2013年12月号 特集=高畑勲「かぐや姫の物語」の世界
高畑勲 西村義明 朝倉あき 奈良美智 細馬宏通
青土社 (2013-11-27)
売り上げランキング: 1,571

監督の高畑勲氏、プロデューサーの西村義明氏、かぐや姫の声を担当した朝倉あきさんのインタビューのほか、歴史学、社会学、批評、画家、ライターなどなどさまざまな視点から作品が語られていて、読んでいくうちに、なんとなくぼんやりとモヤモヤしていた部分が晴れていくような感じがした。まれに、ただ自説を補強するためだけにこの作品を利用してる、みたいな内容のもあったけど、まあそれはそれとして、概ね面白かった。

個人的に一番共感できたのは社会学者である佐藤俊樹氏の「母でなく、救世主でなく、月は輝く」というコラム。今の日本アニメ(ジャパニメーションと言ってもいいかもしれないけど)のキャラクターたちが負わされている役割にフォーカスし、それと対比することで見えてくる高畑作品の特異性というアプローチはなんとなくしっくりくる。

特に最後の方の一文、

でも、少なくとも、謎に見立てた解き明かしや象徴論的な絵解きという様式を借りなくても、物語はまだ語れる。消費者の平均的な欲望に効率よく応えるシステムによらなくても、まだ作品は創れる。それを見せてもらっただけでも、幸せな気分だった。

はホッとした。たしかに「竹取物語」でこれだけ観る事ができるのだから、表現はまだまだやれることはあるのだと思う。

が、そうは言ってもどうしても腑に落ちないことがあるにはあって、それがかぐや姫と捨丸の飛翔シーン。そもそも二人の間に恋愛感情はあったのだろうか。それがどうにも掴めなかったので、映画の展開が追っかけられずモヤモヤしてたというのもある。で、まあ、あったから捨丸も妻子を置いてでも「逃げよう」と言ったかもしれないけど、でもあんなにフワフワした表現でいいのは千尋とハク(『千と千尋の神隠し』)くらいの年代までで、かぐや姫や捨丸くらいの年代だと「え〜」という感じがする。それに同じ夢オチにしても、かぐや姫の疾走シーンと比べても表現方法が違い過ぎる。というかあの飛翔シーンだけ、突然「ジブリ感」満載だった。あれはなんだったんだろうか…

なんてことを、「ユリイカ」を観ながらまた考え始めてしまったので、また近いうちに劇場に見に行ってしまうような気がしている。というか、この感情を共有したいのでみんなもぜひ観て、モヤモヤしたわだかまりを語り合おうぜ。

かぐや姫の物語 サウンドトラック【特典:音源ディスク付き】
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かぐや姫の物語: スタジオジブリ絵コンテ全集20
高畑勲 田辺修 百瀬義行 佐藤雅子 笹木信作 橋本晋治
徳間書店
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