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『ミレニアム』シリーズを読了したわけだが第3部が納得いかない

公開日: : 書籍・雑誌

『ミレニアム』3部作、読了した。ひさびさに”寝る間も惜しんで読む”ことを経験した。カテゴリやジャンルにとらわれず実に盛りだくさんな内容だったと思う。が、第3部の展開が個人的にどうしても納得がいかない。それをこのエントリで書く。たぶんにネタバレを含んでいるので、これから楽しみたい人は飛ばしてもらえると嬉しい。

そもそも、 『ドラゴン・タトゥーの女』から始まる『ミレニアム』シリーズが大ヒットベストセラーだった、ということを全然知らなかった。本屋はよく行くのでタイトルはなんとなく”知ってる”くらい。

興味を惹かれた最初のきっかけは映画館での予告編だったと思う。しかも”お洒落だけどなんだかわからないな”というあんまり良い印象じゃなかった。これがそのとき流れていた予告編↓

その後、別な映画で再び予告編を見た。公開日が近づいたこともあってか、分かりやすい・関心を持ちやすそうな作りに変わっていた。

正直この段階でも映画を見よう、という気はまった起きなかった。「なんかよくあるサスペンスものくらいでしょ」という認識で、それは僕の好物ではない。

映画を見よう、と思うに至ったのは、単にたまたま暇な時間があった、ということと、Twitterのタイムラインで、この映画で主演ダニエル・クレイグの股間にかかるモザイクが不自然すぎる、というTweetをやたら見かけた、ということだけ。単にモザイクに関心があっただけだった。どんだけなもんなのよ、と。

が、実際に映画を見たら途端に原作に関心が沸いた。なぜなら映画が面白かったからだ。「映画長いよ」とも思ったし「登場人物が多すぎて疲れた」っていう感想もあるけど、総合評価は高かった。そして原作を先に読んだ人から話を聞くに、映画はちょっとモノたりないらしい。つまり原作の方が面白いということだ。これは読まなければ!

第1部は閉鎖された小島での事件を発端に主要キャラクターが登場、第2部でそのキャラクターの過去がフォーカスされ戦いの火蓋が切られ、第3部ですべてが大団円を迎える、というのが全体の流れ。細かいところをツッコンでいるとキリがないけど、全編通してのテンポはよくて読んでて飽きなかった。あれだけのボリュームを考えるとすごいことだと思う。

しかし第3部の雑さはなんだろう、というのがずっと引っ掛かっている。大団円を迎えるためにも端折らないといけないところがあったのかもしれないが、それにしても雑だ。

東西対立が深刻になっていた時期に公安警察内部に極秘に作られたという秘密組織「班」。彼らが”国益のため”と考えたものには諜報活動はもちろんあらゆる謀略が含まれ実行されていて、そのために個人の人権が蹂躙されようとも、一般市民が殺されようとまったく動じない。21世紀になって冷戦が終わり彼らの活動の場がどんどん失われ弱体化したとはいえ、彼らは絵に描いた悪の組織じゃなかったのか。なのにあの体たらくはどういうことだ。

いくつか例を挙げる。

■エーヴェルト・グルベリのザラチェンコ殺害計画が杜撰

実施までに日にちがなかった、というのは分かる。しかし予め用意してあった架空の身分が、ほとんどプロフィール欄が空白なのはいくらなんでも問題だろう。そんなの調べれば怪しいことがすぐにバレてしまう。犯行声明だって過去になんども出していれば精神的に問題ある人だと認識されるだろうけど、架空の身分はそうじゃない。しかも火消しのために「班」から出された身分についての連絡も不自然すぎる。実際に警察にすぐに怪しまれてる。なんだ、その適当さ。

■ミカエル・ブルムクヴィストをなぜか尾行しない

最大の謎。自宅に押し入り重要書類を強奪し、携帯を盗聴、メールまで監視している、というのに、本人がどこに行って誰と会ってるのか、という本当に基本的なところをまるでチェックしていない。あれだけ頻繁にアルマンスキーやパルムグレンに会い、公安警察にも頻繁に出入りし、そこで知り合った公安警察官と何度もベッドインしているのに、まったく気づいていない。だから、そこで何かしら情報のやり取りが行われ、準備を進めているというのが、わかりそうなのに何も手を打てていない。いったいどういうことだ。

■携帯の盗聴やメール監視してる「だけ」

自宅に押し入った後に携帯の利用がされなくなったのであれば「ミカエルが盗聴に気づいた」ということに気づくはず。ちゃんと尾行していて、彼が携帯使っているのに何も音声情報が拾えてなければ端末を変えていることにも気づくはずだけど、そもそも尾行してない。同様にメールも利用されてなければおかしいと気づくはずだけど気づかない。とてもまともな連中とは思えない。なんのために活動してるのだ。

■ミレニアムが何かを出版してることを掴んだのに鮮やかにスルー

もう一つの大きな謎。とにかく間抜けな「班」の連中だが、裁判ギリギリになってミレニアムが何かを出版しようとしていることに気づき、印刷所をつきとめ現物を手に入れようとする。が、セキュティ会社に印刷所の周りを固められている、といってアッサリと諦め、しかも「まあ問題ないっしょ」ってことで特に何もしないままスルーする。そんなわけあるか!!その状況で印刷所で何か動いてるのであればそれはミレニアムがザラチェンコ事件に関してなにか仕掛けてきてることは間違いなく、それは「班」にとって重要な問題を含んでいる可能性が高い、と考えるのが普通だろう。すぐ手に入れられないのであれば、裁判自体を延期させ、その間に印刷物を手に入れて、裁判に是が非でも勝つための準備をするのが「班」の仕事じゃないのか。なんでそんなに楽観的なんだ。

僕はその展開になって、印刷物を手に入れられない、となったときにまず考えたのは「事故に見せかけたエクストレム殺害」だ。死亡したとなれば間違いなく審理は延期される。しかも長期に。しかも替わりはすぐに見つけられそうだ。彼らはミッションの為には人の命もさほど大切に思っていないので苦もなく実行できるだろう。その間に印刷物も手に入れて裁判の戦い方を検討する余裕が生まれるはずだ。が、彼らが取った行動はそんなハードボイルドな内容ではなくスルー。拍子抜けとしかいいようがない。

と言ったことが第3部後半に立て続けに起きる。おかげで盛り上がるはずの裁判のシーンがびっくりするくらい盛り上がらない。もちろんテレボリアンとアニカ・ジャンニーニのやり取りは面白いけど、盛り上がるのはそれこそそこくらいだ。

もちろん著者であるスティーグ・ラーソンが「班」の活動にあまり重きを置いていない、という可能性もある。重要なのはシリーズを通してテーマとなっている”女性への偏見や軽蔑、暴力”であり、リスベットの心の変化なのかもしれないけど、それにしてももうちょっと「班」には「活躍」して欲しかった。ラーソン亡き後、もうそれが望めないのは本当に残念なのだけど。

怒りにまかせて長々と批判的な内容を書いてしまったけど、だからといってミレニアムシリーズがつまらないかというとそんなことはない。シリーズ通して十分に楽しめる内容なので、未見の人は是非。ってこんなネタバレを延々に書いた後に言うのもなんだけど。ハリウッド版の映画も第2部、第3部と続くのかな。

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