東金女児遺棄事件のこと、累犯障害者のこと、裁判員制度のこと
連日報道されている東金女児遺棄事件から関連したことをいろいろ書く。
この事件が起こったこと自体、「あぁ、またか」という感想だったと思う。被害にあわれたご家族のことを思うと大変心無い言い方かもしれないが、あまりにこういう事件を見聞きし過ぎていて、慣れ、というか驚かなくなったのもあり、実際、事件の情報自体も発生から3ヶ月しないうちに忘れてしまっていた。”だったと思う”という言い方をするのはそういう意味。
先日容疑者が逮捕され、各メディアで情報が出てきて、事件に関するblogも見かけるようになったが、あるblogを読んでいたらこの事件に関連して「レッサーパンダ事件」について言及するものを見かけ、今回の事件と繋がりが気になってネットで調べてみた。「レッサーパンダ事件」の犯人とは今回の容疑者と同じく「知的障害者」ということで繋がるのだけれど、どうもそれだけでは話が終わりそうもない。
ひとまず入り口はこの辺から。「レッサーパンダ事件」の裁判での問題点について。
パーソナルサポート通信 05年6月号「浅草レッサーパンダ事件」
弁護団が被告人質問に終始したのは、男性が障害をもっていたということを衆目にさらし、だから責任能力はなかった、罪については大目にみてほしいと主張するためではない。むしろその逆で、障害のある人が犯罪をおかした場合であっても、裁かれるときにはきちんと裁かれなくてはいけない。だが、いまの司法制度はそれができていないじゃないかという立場での弁護だったのだと思う。
「知的障害者をきちんと裁ける司法制度」というのはどういうものだろう、と考えつつ、さらにいろいろ調べていると、こんなキーワードにも繋がっていく。
累犯障害者
■すべての受刑者は入所後、作業の適応力を調べるための知能テストを受けるが、その結果によると全受刑者のうち4分の1が知的障害者であった。また彼らが刑務所内で行う作業は、結んだ紐を解いたり、一つの箱の中の数種の色の蝋のかけらをそれぞれに分けるといった、およそ生産労働とは呼べないものばかりである。
■それ以外にも視覚障害、聴覚障害、身体障害、精神障害の受刑者が多数存在し、彼らは劣悪な生育歴の中でほとんど福祉と結びつくことがなく、おにぎり一個の万引き(窃盗罪)や無銭飲食・無賃乗車(詐欺罪)のような微罪で、7回、8回と繰り返し刑務所に入ることによって生き延びているというのが現状である。
■累犯障害者に刑事訴訟法の定めるところの訴訟能力や受刑能力が備わっているかどうかは、極めて疑わしい。しかし身元引受人や受け入れてくれる福祉施設がなく、また自力で再就職し生活の基盤を確保することも困難であるため、刑務所に入らなければ生存すら危ぶまれ、検察官や裁判官もやむを得ず受刑させている面がある。
また『累犯障害者』という著作の作者自らテレビで詳細を語ったものをすべてテキストに書き起こした偉人がいたので紹介しておく。細かいところはここを読むとよくわかります。
「累犯障害者」の現実 -朝日放送『ムーブ!』1月22日放送分テキスト起こし-(sokの日記)
社会で受け皿が無いために犯罪を繰り返し、またそれによって生き延びられているという皮肉な現実。今回の事件は累犯ではない(と思う)が、容疑者宅にプリキュアやポケモンのアニメがあった、とかそんな報道より、なんでこういうことをもっとメディアは伝えていかないのだろうか?
犯罪は犯人の個人的なものと同時にその人を取り巻く社会状況というのが強く働くとされていて、殺人は他の犯罪に比べるとそれが反映されやすい、というようなことを以前どこかで読んだことがある。もちろん殺人は重罪で「社会が悪いから」などということは通用しない。しかし社会に許容されず居場所無く生きていかなければならない人たちが犯行に及ぶことも多い中で、なおかつ人とのコミュニケーションがスムーズに行えない人たち、現実感覚や「常識」とのズレを持つ人たちを差別せず、特別扱いもせず、裁いていくことはものすごく難しいのじゃないだろうか。
今はなにかにつけて「自己責任」という形で切って捨てられる傾向にあるし、犯罪には厳罰を科す方向に舵が切られていて、もちろん重犯罪は厳罰に処す必要があるとは思うけど、もっと手前の僕らが暮らす社会そのもののあり方から考えていかないといけない時期に来てるんじゃないかと思う。そういうことを認識する意味でもうすぐ始まる裁判員制度というのはその制度の善し悪しは別としてもタイミング的にはとてもいいのかもしれない。もちろん実際問題として、今回のような事件を担当するようになったらその苦しさは想像を絶するとは思いますが…
なんか話が散漫になってしまってすいません。いろいろ調べて書いたつもりですが、表現上の間違いや、事実誤認などあればご指摘ください。
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軽度知的障害の問題
今後の著者の活躍に期待
休み休み読みました
読んだあとが大事
世間の人がこういう実態を把握していない
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Comment
日本じゃ、重大犯罪が起きてから、犯人が逮捕され裁判で重罪に処されるんだけど、そもそも、重大事件が起きるであろう温床を野放しにしすぎている現状があまりにも多いと思う。
どうして防止に対して、もっと真剣に取り組まないかと・・・・
凶悪犯は死刑だ!なんていう前に、こうした人間がどんどん出てくる社会環境(教育も含め)をもっと見つめ直す必要性があるんじゃないかな?
それに日本の刑務所って、本来、更生目的なはずが、受刑者に対してストレスやフラストレーションが溜まるような、目的と反した環境のようだし、こうしたところも改善しないと再犯だって防げないと思う。
本件に関しては古い事件ではあるけど、「狭山事件」を思い出さずにはいられないね。
石川県の女子高校生殺人事件で任意同行(逮捕でなく)された容疑者だって、窃盗という別件でしかも6日にも及ぶ家宅捜査。
警察も何でもアリって感じで怖いね。
とはいえ、事前防止に力を入れるとなると監視社会になりかねないし、かえって警察の権力拡充に繋がってしまうと思うんですよね。難しいところですね。