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『 荒野へ 』

公開日: : 書籍・雑誌

 9月6日に公開される映画『 イントゥ・ザ・ワイルド 』が良い作品だったのもあり実存した主人公クリス・マッカンドレスに興味を持ったので原作を読んでみることにしました。『荒野へ』、山岳家であり文筆家であるジョン・クラカワーによるノンフィクションです。

 聡明だが不遜、人当たりはいいが人の忠告には一切耳を貸さず、自分に課せた高い理想のみに邁進する青年。映画の中ではだいぶ柔らかい表現だったが、本の
中ではかなり人物像に切れ込んでやはりどちらかというと「変わった人物」として見える。だが「死に至る経緯は不用意で迷惑としかいいようがないが、だが彼
がしてきた行為そのものには人を引きつける魅力がある」とし自身が同じような経験をしてきた著者クラカワーは「自分は生き、彼は死んだのは運以外の違いは
ない」という。彼はただその時代に行う冒険以上のものを期待して、そのために自分に十分以上な要求を課せ過ぎたのだ、と。

 たしかし、クリスがしたような冒険は誰でも一度はしたいと思ってきたと思う。実際このインドアな僕でも、何もない、誰もいない荒野で一人で生活したい、
と考えたことが何度もある。でも僕は臆病だし、サバイバルさが足りないのを分かっていたし、もちろん今ではもう背負っているものが多過ぎるので無理だ。で
もクリスは「できない」「無理だ」とは一切思わず、それ以上に人のアドバイスや忠告すら聞かずに荒野へ分け入っていく。そこで死んだことに「愚かだ」「迷
惑だ」と言う意見があることはわかるし実際そうだと思うが、彼の道のりはやはり魅力的だと思うし、羨ましくも思う。

 ちょっと以下はネタバレっぽくなるので、映画を見る人は読まない事。

 本を読んで知ったのは、皮肉なことに彼が最後命を落とした場所、マジックバスの周りはさして「大自然」ではなかったということ。すぐそばにハイウェイが通り、多くの観光客が訪れ、渡るのを諦めた川も数キロ南に下ればゴンドラがあった。彼は「冒険」の基本である地図とコンパスを意図的に持たなかったことによりそれらに気付かなかった。前者は彼に取ってはそれでよかったのかもしれないが、後者はそれによって命を落とすきっかけにもなった。生まれ育った環境から抜け出し、新しい自分として出発する、として選んだ場所がそういうところだった、というのは皮肉だし、ちょっと悲しい。まあもとより彼が生まれ育った時代(クリスは僕より1年早く生まれている)には、アラスカに「残された大自然」なんてなかったそうだけど。

 著者クラカワー自身の体験談も交え、映画では見えてこなかったクリスの人物像を知る上でもとても興味深い内容でした。映画を見る前、見た後、どちらでもいいけど、関心があれば是非一度読んでみてください。

 それにしてもそろそろ外でキャンプしたい。ソロキャンプとか最近してないしなぁ。

荒野へ (集英社文庫 ク 15-1)
ジョン・クラカワー
集英社
売り上げランキング: 5333
おすすめ度の平均: 5.0

5 品格を取り戻してくれた作者
5 過剰な理想主義と自己探求
5 一気に読んでしまいました
5 祝・映画化!

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