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『 ぼくは落ち着きがない 』

公開日: : 書籍・雑誌

 久しぶりに長嶋有を読んだ。Amazonのレビューで「何が言いたいのかわからない」とか書かれたりしている長嶋有ですが、相変わらず特にドラマがあるわけでもなく淡々としていて、それが好きなわけですが。

 高校の図書室とその中にある図書部の部室がメインの舞台。登場人物は図書部員、図書委員、文芸部長、少しの先生と一人の元先生、一人のOBだけ。恋もなく、大きな喧嘩があるわけでもない。(読んでないけど)『恋空』のようにやたらドラマチックな要素はまるでない。それを卒業を控えた3年生の望美の視点で、淡々と高校生の日常が描かれている。

 だから面白くないか、というとそんな事は全然ない。派手なドラマがないと”エンターテイメント性がなくてつまらん”という人もいるのは知ってるけど、別に生きていてそんな日々ドラマがあるわけじゃないわけだし、もとより高校生なんてありあまるエネルギーを無為に消費していく生命体なので、これくらいのグダグダ感がりあるで僕は好きだ。

 そのリアルさを長島有はテキストで独特な表現の仕方をする。本作はそれが(括弧)という形で、喋り言葉、主観、状況の説明の言葉のすきまを不思議に埋めていって、そこに柔らかく心地よい流れが生まれている。(括弧)は彼の他の作品にもよく出てくるが、その独特さが彼の描く普通の人たちの普通の生活に心地よくマッチしていて、そういうのがやっぱり僕が好きな理由なのだと思う。

 長嶋有作品の中にはよく男気溢れる可愛らしい女性が登場していて(「サイドカーに犬」のヨーコさんや『泣かない女はいない』の睦美とか)、本作にも頼子が出てくる。こういうキャラの子は個人的にもの凄い好き(笑)

 もう一つ、相変わらずのサービス精神で「図書館で借りるんじゃなく、買ってくれた人向けのサービス」が今回もちゃんとされている。その中での望美の相手はやはり「毎回本を限界まで借りにくるのに一度も姿を見る事が出来なかった彼」なのだろうな、と思う。残念なのが頼子の部分だけが途中で切れてしまってるところ・・・まあそうですか。

 突出して好きか、と聞かれてるとやはり僕は『パラレル』が一番好きだけど、本作も小気味よく読める良作だと思います。まだの方は是非。

ぼくは落ち着きがない
ぼくは落ち着きがない

posted with amazlet at 08.08.09
長嶋有
光文社
売り上げランキング: 511
おすすめ度の平均: 4.0

4 なんか脱力感ただよいながら・・・おもろい・・・でも読みづらいかな?
4 ぬるーい感じがいい。
4 壁の外へ
5 最高に居心地がいい空間

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