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グレート生活アドベンチャー

公開日: : 最終更新日:2014/09/16 書籍・雑誌

タイトルだけでもう買うことを決めてしまった。スゴイ。

”生活”は英語で「life」で、でも「life」は日本語にすると他にも”人生”とか”生命”とかにもなって、そっちは言葉に威厳というか崇高さというか生きていくなかでもマクロな話題なのに、”生活”はすごいミクロな世界で、”生活の知恵”というと想像されるキーワードは”節約”とか”倹約”とかだし、いや確かに日々の”生活”は大切だけど、なぜか言葉的には独特なせせこましさとか貧乏臭さがある。

それを「グレートアドベンチャー」という壮大な言葉の間に挟みこむセンス、最高。まあ「グレートアドベンチャー」ってタイトルの前田司郎著作もちょっと読んでみたいけど(笑)

内容は表題作と『ゆっくり消える。記憶の幽霊』の2作。表題作の主人公は男性、『ゆっくり~』は女性、どちらも30歳。男性はすべての思考を停止させてガールフレンドの家で引き篭もり、女性は考えすぎるのがイヤになり崖から飛び降りる。

どっちもその状況に至る前はそれほど最悪な状態ではない。何にハンディキャップがあるわけでもなくとりあえずは生活もできている。コミュニケーションににモンヂアがあるわけでもなく人付き合いもちゃんとできてる。そしてどちらも自分を心配してくれる人がいる。

ただ30年生きてきて、今までのことを振り返るとどちらもこの先に自分の生活が大きく変化するなんてことは想像もできないし、好転するなんてことも期待できない。人生は壮大で日々波乱に満ちているけど肝心の生活は所詮そんなレベル。でもそこから抜け出したら人生は存在しないし。生活を抜け出すには人生を放棄するか、生命を放棄するしかない。でもそんな選択肢もどっちも主人公たちには滑稽ではある、別にそれを選ばなければ行けない理由を自分でもよくわかっていないのだから。

今の30歳前後の人たちを「不遇の時代」とか「ロスト・ジェネレーション」とか言われ、僕はその時代とは少しずれているから、本当に状況を感じることはできないけど、前田司郎の軽妙でシニカルな語り口にまぶされているとはいえ、実際は相当な閉塞感と先の見えない不安さの中にあるのかもな、とは思う。別にすべてを時代や世間の所為にはできないのはわかっているけど、そのどうしようもなさにもう考えることすら面倒になってしまったんじゃないか、という気もする。

でもそういういろいろな面倒臭さもこの語り口にのせて笑えるようになるときもそう遠い話しじゃないとは思うよ。絶望するのも面倒だからこそ。

今の所、前田司郎は外れがないな。完璧。他の著作もふくめこれもオススメですよ。

グレート生活アドベンチャー
前田 司郎
新潮社
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